大河ドラマ

  昔のことなので、恐らく事実誤認や記憶の捏造等あると思うが、大河ドラマの思い出。

 
90年代はよく大河ドラマを見ていた。母が大河ドラマが好きだったので一緒に見ていたのだと思う。
 
  中身は覚えていないが、見た記憶のある一番古いものは92年の「信長 KING OF ZIPANGU」だ。これは見たことがある、というレベルでしか覚えていない。次は「琉球の風」で、これは東山紀之が主役、舞台が沖縄であったことは覚えている。小さかったので内容はさっぱりわかっていなかったが、海といえば友人曰く日本一汚い海水浴場らしい貝塚市の二色の浜しか行ったことのなかった私にとって、沖縄の美しい海は鮮烈だった。沖縄を認識したのはこれが最初だ。それに続く「炎立つ」「花の乱」についてはまるで記憶がない。見ていないことはないはずなのだが。
 
  そして95年の「八代将軍 吉宗」だ。これは毎週欠かさず見ていた。恐らく私が時代劇の仕組みを理解したのはこの作品からだった。無論内容はわからなかったが、よだれ鼻水涙と顔から出るあらゆる汁を垂れ流しながら喋る徳川家重が強烈だった。わからないのに欠かさず見ていたのは家重役の中村梅雀や、吉宗役の西田敏行ら役者の力だったのだろう。江戸中期なのでチャンバラシーンは無く、政治と吉宗とその家族の話が軸だったはずだ。
 
  時代劇の仕組みを理解したと先程書いたが、特に難しいことを理解したのではなく、自分の重大な勘違いに気づいただけという言い方もできる。すなわち私は時代劇のことをドキュメンタリーだと思っていたのだ。戦国時代からカメラは存在し、本物の信長や吉宗を撮っていたものを編集して放送していると思っていたのだった。誰も教えてくれなかったのでこれは仕方が無い。時代劇について語らえる友が一人でもいれば状況は変わったはずだ。
 
  なぜドキュメンタリーではないことに気づいたかといえば、八代将軍吉宗と同時期に「暴れん坊将軍」も放送していたからだ。私は暴れん坊将軍は95年以前からの大ファンで、無論ドキュメンタリーだと思っていたから「将軍は大変な仕事や」とその仕事ぶりに感心していた。そして暴れん坊将軍の本名が吉宗であることを母から教わった。そしてそれはこれから放送される「八代将軍吉宗」その人だということも。
 
  「八代将軍吉宗」は、吉宗の幼少期から物語が始まったはずだ。前から暴れん坊将軍吉宗のことが大好きで、ヒーローの幼少期を知れるということもあって欠かさず見ていた面もあったように思う。無論自分の中でドキュメンタリーであると思っているからだ。
 
  そして成人した吉宗が西田敏行であった。私の知っている暴れん坊将軍松平健とは似ても似つかぬ風貌、齢7つの私はこの時、ようやく時代劇の仕組みを理解したのだった。