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多数決を疑う--社会的選択理論とは何か

複数の構成員による意見集約が必要な場面において、一般的に多数決が用いられる。しかし多数決は選択肢が3つ以上あるときには構成員の意思をうまく反映できないことがある。本書はそれを示し、そして多数決以外の意見集約ルールの可能性と実効性を探る。

 
多数決とは得票を一番多く集めた選択肢を採用する方法で、学級会議から選挙にいたるまで日本では自明のように意見集約の際に採用されているが、著者の多数決に対する見解は辛辣である。いくつか挙げると、「安易に多数決を採用するのは思考停止というより文化的奇習の一種」、「暴挙というより無謀」などおもしろい。多数決がうまく民意を反映しなかった例として2000年のアメリカ大統領選挙がある。事前の世論調査ではゴアが有利でブッシュが劣勢だったが、そこに第三の候補者ネーダーが立候補した。そしてネーダーの主張はゴア寄りであったがためにゴアの票を食い、結果的にブッシュが勝利した。ゴアはネーダーにもブッシュにも勝つのに、多数決で勝利したのはブッシュである。多数決がうまく機能してない。多数決は意見集約ルールの一つであって、ただ一つのルールではない。他にも意見集約の仕方はある。他の意見集約ルールとして、本書ではボルダルール、コンドルセ・ヤングの最尤法を主に紹介していおり、どちらも多数決よりは優れていることを説得的に論証している。
 
簡単に説明すると、ボルダルールとは選択肢に順位をつけさせ、一位なら三点、二位なら二点、三位なら一点と点数をあらかじめ定めておき、その総和が一番大きい選択肢を採用する。コンドルセ・ヤングの最尤法は統計的に一番真実に近いものを選ぶ方法で、データをもとにこのデータを生み出す真実として可能性の高い選択肢を選ぶらしい。
 
ボルダルールが採用されていれば、先の大統領選挙の結果は変わっていただろう。しかしボルダルールやコンドルセ・ヤングの最尤法は多数決よりずっと優れているが、お互いに矛盾する場合もある。とすれば民意とは採用された意見集約ルールの単なる結果にすぎないこととなる。しかしボルダルールはわかりやすく、多数決より幅広くポイントを稼ぐことが必要となるため、民意に近いと考えられ、やはりボルダルールを採用すべきというのが著者の主張だ。