職質みたいなもの

  今日は歩いてタオルを買いに出かけた。その店には出口のすぐ脇に駐輪場があって、帰りにその前を通ると「すみません」と声を掛けられた。

  声を掛けたのは二人の警官だった。若い方の警官が、「さっきこの自転車に乗って来られましたよね?」と一台の自転車を指差しながら私に尋ねた。

  いや、私は徒歩ですけど、と答えると一旦は「あっ、そうですか失礼しました。」と解放されたが、五秒後にまた「ちょっと待って。自転車に乗って来てたでしょう。」と呼び止められた。

 いやだから私は自転車に乗って来ていない、歩いてきました、とやや強めに返すと、年配の方の警官が「さっきそこで会いましたよね?」と聞いてきた。

  ここに来て急に不安になって来た。恐らくその自転車は盗難されたものなのだろう。もちろん私はやっていない。しかしそれを口頭で証明する術はないではないか。指紋を取れば疑惑は晴れるだろうが、そこまでしなくてはいけないことになるのだろうか。タオルを買いに来ただけなのに。あんまりだ。

  しかし諦めてはいけない、自分の立場を明らかにしなければ、と気力を持ち直して、あなたに会ったことはない、自転車については知りません、と出来うる限り毅然と伝えた。無実の証明には全く貢献しない発言に不安を覚えながら。

  三分程、知ってるだろいや知らない、さっき会っただろいや会ってない、を繰り返してなんとか向こうは納得したらしい。「いやー服装が似てて。失礼しました。」と言っていた。

  私はやってないんだから認めるわけはないんだから行くところまで行くしかないわけだ、と半ば思っていたので三分程で解放されて安堵した。別に警官に対して何か思うところもない。似てたから私に声を掛けただけだ。強権を振るわれたわけでもない。長い三分間ではあったが。

  それよりも思うことは、服装が似てる、とはどういうことを意味するかだ。

  私はダサいと自認している。しかし似ていると言われたということは同じような服装をしている人がいるということだから、もしかしたら私は案外ダサくないのかもしれない。この事実は友人に自慢しなくてはならない。

「私のような格好している奴がすくなくとも一人はいるらしいぞ!  」