笹井会見

  正直に告白すると、あまり言っている意味がわからなかった。質問に対する回答がちょっとずつズレているように感じて、最後まで答えを集中して聞くことができなかった。この人はものすごく頭のきれる人として有名なので、頭良い人用の会見か。私はお呼びで無いらしかった。

  内容は科学的なことと釈明とが合わさったものだ。このくらいはわかる。ただ、科学的なこととは言っても、STAP細胞が仮説としてまだ有るという前々からの理研側の主張に関する新たな主張、見解、根拠などの開陳は無かったと思う。既報通り「STAP現象は有力な仮説だ」と言っていた。

 しかし、 一夜明けた今日の朝刊では識者のコメントとして「科学的に納得できた」とするものもある。私は4月7日の丹羽仁史さんの会見で説明されたものを超えた部分は無かったと認識したので、丹羽さんの説明には無く笹井さんの説明にあるものがどこなのか指摘して欲しい。この識者はおかしい、そんなの無かったのに!と批判しているのではなく単純に興味がある。

  ちなみに丹羽仁史とは、論文の共著者でありこれから再現実験を担当する理研の人だ。この人もSTAP現象は有名な仮説だとする。

  これだけ疑義があるのになぜまだ仮説としてあると考えているのか?と普通思うが、胎盤が光っている写真がES細胞やiPS細胞の混入では説明できないからSTAP現象が仮説として生き残っているそうだ。

  丹羽さんの会見時の説明によると、多能性を示す一番強い証拠は、緑に光るよう(科学的に)細工した万能細胞をマウスの胚盤胞(受精して5日目ぐらいの卵のことらしい)に注入し、そしてその胚が胎児キメラマウスとなって全身ビカビカ緑に光ることだそうだ。今回の論文に掲載された写真では胎児が見事ビカビカ光っている、のみならず胎盤までビカビカ光っている。胎盤まで光るというのがSTAP細胞の驚きの点で、ES細胞やiPS細胞を使って普通にキメラを作っていては胎盤まで光らせることはできない。一応2例報告されているが、理研に設備が無かったり、報告自体がSTAP実験後であったりするのでこれらを不正に使って混入することもできない。この胎盤が光っているということがこれまでの経緯では説明がつかないからSTAP現象はそれを説明する仮説として未だ健在なのだそうだ。たぶん笹井さんもこういうことを言ってたのだと思う。

  よって科学的にはSTAP細胞は無いとも言えないのだ、現段階では論文不正を問題とすべきでSTAP細胞が在るとか無いとかはナンセンスだ、と言いながら軸足はSTAP細胞懐疑派に置いておくのが今回の騒動を楽しむコツだ。