夫婦別姓、再婚禁止期間

近々、夫婦同氏と再婚禁止期間の規定について最高裁憲法判断がなされることとなった。

 
民法では夫婦同氏の原則を採用しており、婚姻に際して夫婦どちらかの姓が本名となる。多くの夫婦は夫の姓を名乗る。夫婦別姓は認められておらず、仕事をするうえで姓を変えたくない側は元の姓を通称するほかない。この民法の規定は、両性の平等、個人の尊厳、婚姻の自由に反し、憲法違反だとするのが原告の主張である。第一審、二審では憲法上夫婦が別の姓を名乗る自由は保障されていないとし、民法の規定は合憲とされた。
 
最高裁がどういった判断を下すのかわからないが、選択的夫婦別姓が認められても、同氏にすることも選べるので単に選択肢が増えるにすぎない。別姓を選ぶのは夫婦双方が姓にこだわりのある場合であり、現状その場合、結婚することはどちらかが折れることを意味し、それは個人の尊厳がないがしろにされていることになるし、そのために婚姻を断念することは婚姻の自由が制限されていることになる。婚姻を断念したこてにより税制上の優遇を受けられなければ財産権が侵害されたことにもなるのではないか。よって私は、民法の規定は憲法に反しているから選択的夫婦別姓を認めるべきだと考える。選択的夫婦別姓が認められると家族の絆が失われるとの批判があるが、これがどのくらい妥当な反論か私にはわからない。
 
再婚禁止期間の規定の何が問題かを理解するのはちょっとだけ難しい。しかし答えは自明に思える。
 
男性は離婚後すぐに再婚できるが、女性は離婚後180日以上経ないと再婚できないと民法773条で規定されている。これは嫡出推定の重複を避ける趣旨である。つまり妻が妊娠した場合、子の父が、前の夫なのか、今の夫なのかがわからないなんてことにならないための規定である。しかしなかなか問題のある規定なのだ。
 
民法772条1項により、妻が婚姻中に「懐胎した子」の父は、夫と推定される。誰であれ自分と父の関係は推定でしかない。母子関係は懐胎の事実からあきらかであるのに対し、父子関係は目に見えるものではなく推定するしかないし、普通は婚姻中に妊娠すれば夫の子として良いだろう。そして2項で、婚姻の成立から200日経過した後又は婚姻が離婚等で解消や取り消しがされた日から300日以内に「生まれた子」は婚姻中に懐胎したものと推定され、すなわち1項から夫の子と推定される。
 
ここで、ある女性Xが前夫Aとの離婚届と同時に後夫Bとの婚姻届を出し、それが受理された場合を考える。もちろんこれは再婚禁止期間の規定に反しているから普通は受理されないが、何らかのミスで受理されたとする。離婚後1日目が婚姻後1日目となるケースだ。
 
そして例えば届け出の1日後に子供が生まれたとすると、婚姻の解消後300日以内に生まれた子であるから前夫Aとの婚姻中に懐胎したものと推定され、前夫Aの子と推定される。婚姻の成立から200日を経ていないから後夫Bの子とはならない。この場合は問題は生じない。200日目まで結論は同じだ。では、201日目以降ならどうなるか。201日目に生まれたとすると、婚姻の成立から200日を経過しているから後夫Bが父と推定されるし、婚姻の解消から300日以内に生まれた子であるから前夫Aの子とも推定される。推定が重複しており、子の地位が不安定にさらされてしまう。この状態は201日目から300日まで続く。これを避けるために再婚禁止期間の規定があるのだ。しかしよく考えるとおかしい。禁止期間は180日ではなく、論理的に言えば100日で良いからである。
 
先の例を、後夫Bとの婚姻届が、前夫Bとの離婚届の100日後に出されたと変えてみる。そして婚姻届を出したその日に子が生まれたとする。これは前婚の解消後300日以内であり後婚から200日を経ていないから前夫Aの子と推定される。100日目でも200日目でも前夫Aの子と推定される。201日目に生まれると前夫Aとの離婚から301日経っているのでAの子とは推定されないし、Bとの婚姻から200日経過しているからBの子としてのみ推定される。もちろんこれ以降に生まれると、婚姻後200日を経過していて離婚後300日以内でないからBの子となる。
 
以上で推定の重複を避けるための再婚禁止期間は100日で足りることを説明した。
 
180日の規定は100日より長いので合理性があるといえるかもしれないが、条文から導かれる論理的な結論ではない。100日とすべきである。